諸葛亮はなぜ劉備が季漢（蜀漢）の臣下たちに格別の恩恵を与えたと言ったのか？

刘备が魏延を漢中守備に起用したことは、単に張飛を選ばなかったという異常さだけじゃないんだ。これこそが劉備個人、あるいは蜀漢グループの人材登用の基本方針を反映している。この方針によって、諸葛亮が言うところの「近侍の臣、忠志の士」が選抜され、時代に抗う理想主義の香りがプンプンしてるんだ。

まず第一に、魏延は士族じゃなかった。

後漢末は士族の時代。士族ってのは代々官僚を輩出する家柄で、実質的に人材登用を世襲制にしちまった連中だ。何世代も官僚を続けるうちに、教育資源（書籍や師匠）を独占し、出世ルート（一族や門弟の推薦）を掌握し、社会の世論（時政批判や人物評価、例えば月旦評）を支配し、最終的には大量の土地を占拠して豪族化した。後漢末には、この階級が避けられない形で支配層になったんだ。袁紹の袁氏、荀彧の荀氏、孔融の孔氏、楊彪の楊氏とかが典型例だ。
 

【士族の特権構造】
 

こういう状況で地盤を固めるには士族に頼るしかない。彼らを登用し、資源を分配し、特権を制度化すれば支持を得られる。でも劉備の人材方針では、士族に特別扱いしなかった。蜀漢の四大将軍（関羽・張飛・馬超・黄忠）に趙雲を加えた面子、誰一人として士族出身じゃない。諸葛家は士族だけど寒門（低い家格）で豪族じゃないし、龐統も似たような境遇。糜竺・糜芳は大商人出身だ。

この点で曹操と劉備は立場が一致してる。曹操は士族と徹底的に戦った。孔融を殺し、辺譲を斬り、禰衡を追放——いずれも当代きっての名士だ。重要なのは「唯才挙用」の方針を打ち出したこと。現代人の感覚だと「能力重視って当たり前じゃん？」って思うけど、当時は士族の既得権益を切り崩す暴挙だった。士族が目指したのは「出世ルートの独占」だから、出自を問わず人材を登用されると特権が消える。曹操の死後、曹丕は士族と妥協。九品中正制を導入して士族優遇を制度化したんだ。

蜀漢はこの点でより徹底してた。諸葛亮の法治主義が象徴的で、「私情に左右されず、法を平等に適用する」って姿勢。馬謖を泣きながら斬首したエピソードは、まさに「私の側近でも法を犯せば処刑する」というメッセージだ。こんなやり方、士族が好きになるわけないよね？

次に、魏延は益州出身じゃないって点。当時の中華は北方が中心で、蜀漢も東吳も地方政権だった。地方政権は「地元出身者を優遇すべきか」という現実問題に直面する。東吳の孫権は呉郡四大氏族（顧・陸・朱・張）と結びつき、完全な本土化路線を選択した。その代償として天下統一のエネルギーを失っちまった。

【蜀漢vs東吳の比較】
 

これに対して蜀漢は益州人を中枢から排除。東の荊州には北方出身の関羽、北の漢中には荊州出身の魏延を配置した。諸葛亮の側近（馬謖・楊儀）や後継者（費禕・蒋琬・姜維）も全員益州出身じゃない。その結果、地元士族との対立が絶えなかったが、逆に「天下を取る」という志を失わずに済んだんだ。「興復漢室」はスローガンじゃなく、外来政権が生き残るためのイデオロギーだった。

最後に魏延の経歴の浅さ。蜀漢政権が爆発的に拡大した状況（建安13年に曹操に追われてた劉備が、同16年には益州攻略開始）で、20歳年下の若者に相談したり、無名の武将を要衝の守備に起用する度量が必要だった。劉備が魏延を評価し、馬謖を評価しなかった判断力は流石って感じだ。

総合すると、劉備の人材登用（諸葛亮に引き継がれた方針）は、以下の3点で時代と真っ向から対立してた：
 

• 士族優遇せず

• 地元出身者を特別扱いせず

• 年功序列を無視

この「理想主義」は現実的な代償を伴った——士族の反発、地元の不満、短期政権（43年で滅亡）など。でも1800年後の現代、士族も司馬晋も歴史の塵と消えた今、私たちが三国志に惹かれるのは、まさにこの「時代に抗った人間の輝き」じゃないかな？襄陽の民が自発的に劉備に従った話や、黄権家族を厚遇したエピソードからは、乱世にあってなお「信義」を貫こうとした人間の姿が見える。勝敗なんて所詮一時的なものさ。歴史のゴミ箱に消えた士族たちより、理想に燃えた蜀漢の面々の方が、ずっと記憶に残るんじゃないかね。