飲食や娯楽に限って言えば、現代人は古代の皇帝たちよりも恵まれているのではないでしょうか？

昔に比べて現代の生活は圧倒的に豊かになりました。

まず食の面では、古代の皇帝でさえ新鮮な食材を手に入れるのが困難だった時代に比べ、現代の物流・コールドチェーン技術のおかげで、新鮮な食材を簡単に入手できるようになりました。楊貴妃が荔枝を食べたことが歴史に残るほどの特別な出来事だったのに対し、現代では貧困層でない限り、誰でも年間を通して荔枝を食べられます（表1参照）。
 

昔「山の幸海の幸」と言われた珍味も、現代では日常的に楽しめるものになりました。皇帝や権力者の特権だった「他人が入手できない食材を食べられる」という優越感は、現代の生産技術の発展によって消滅しつつあります（表2）。
 

ただし食文化に関して言えば、中国料理の真髄は「手間と技」にあります。例えば普通の食材を使っても、職人が100時間かけて作る佛跳牆（フォーリャオチアン）のような料理は、現代でも皇帝級の贅沢と言えるでしょう。

飲み物の分野では、現代の一般市民が日常的に楽しめる冷蔵飲料の種類（表3）は、古代の皇帝ですら想像できなかったレベルです。
 

娯楽面では、エアコン完備の生活やテーマパークなど、現代のテクノロジーによる快適さは古代の富裕層ですら手に入れられないものです。しかし一方で、皇帝が持っていた「専属の劇団を24時間呼び出せる」といった特権は、現代の富豪でも真似できない特別な権力の象徴でした。

芸術鑑賞においても、故宮博物院に収蔵されるような皇室コレクションの質と量は、個人コレクターがどう頑張っても及ばない次元のものです。生産力とテクノロジーから離れた領域では、やはり古代の支配者たちの贅沢にはかなわない部分があると言えるでしょう。