古代中国に存在した大量の銀は、なぜ現代になると消えてしまったのか？

長い年月が経った今、先人たちが命がけで手に入れたこれらの銀は、どうして消えてしまったのでしょうか？まるで鍋で茹でた餃子をすくったらスープだけが残っているような話に聞こえませんか？

考古学者たちはこの謎に答えを出しました。実は銀は消えたのではなく、「見えるけど触れられない」運命の道を辿ったのです。

歴史を遡ると、夏・殷・周の時代には銀は全く重要視されていませんでした。当時の人々は貝殻を使って取引していました。海辺で拾える貝殻が、軽量で耐久性があり、希少性もあったため、現代の「ハードカレンシー」のような役割を果たしていたのです。農業が発展すると銅製の農具が取引に加わり、刀銭や鏟銭など、様々な工具が通貨として使われました。

しかしこれらの「工具貨幣」は重く携帯に不便でした。春秋戦国時代になると賢明な祖先たちは銅銭を発明し、軽量で使いやすく形状も統一されたため、取引効率が大幅に向上しました。この時期の銀は依然として「冷遇」されていたのです。

秦の始皇帝が金属貨幣を確立し、全国統一後には金と銅銭を公式通貨と定めました。金は「上幣」、銅銭は「下幣」として位置付けられました。漢代には金の地位がさらに高まり、皇帝が功臣に賜る際には数千斤単位で金を与えることが常態化しました。三国時代の戦乱で金が枯渇すると、銀が表舞台に立つチャンスが訪れたのです。

魏晋南北朝時代、金が減少し銅は武器製造に転用される中、銀が緊急避難的に使用され始めました。唐・宋時代には民間取引の主役となり、特に経済発展した宋代には遼宋間の軍事費決済にも銀が使われました。この時期までに銀は完全に金を凌駕し、通貨市場の覇者となったのです。

明代には銀が真の輝きを放ちました。政府が「大明宝鈔」紙幣を推進する中、民間では銀への信頼が厚く、海上貿易の発展で海外から大量の銀が流入しました。下表は明代の銀流入量を示しています：
 

銀の購買力は頂点に達し、日常生活から大規模取引まで全て銀で賄われました。政府も銀制限を解除し、主要通貨として正式に認定したのです。

清代になると鎖国政策が貿易を制限する中、列強による銀の略奪が始まりました。アヘン戦争後の賠償金支払いで国家財政が逼迫し、貪官汚吏による海外流出も相次ぎました。下表は主な賠償金を示します：
 

更に粗悪な銀の流入で通貨システムが混乱し、銀の実質価値は大きく毀損しました。

民国期には世界経済恐慌で銀価格が暴騰し、アメリカによる大量買い付けで銀がさらに流出。1935年に国民政府が銀本位制を廃止し法幣を採用したことで、銀の通貨としての歴史に幕が下ろされたのです。

このように銀の「消失」は歴史的必然でした。存在感の薄かった透明な存在から明代の「通貨王」へ、そして清代の流出へと、銀の運命は国家の盛衰と密接に連動していました。かつて国家経済を支えたハードカレンシーは、今では当時の輝きを取り戻せないまま、装飾品や工業用として細々と生き残っているのです。